SDの業務フローについて

SAP-SD

当記事ではSD(販売管理)モジュールの業務フローについて、簡単に解説していきます。
SDモジュールでは企業の販売行為について管理できます。
FIT&GAP分析の結果、導入PJによっては登場しないフローもありますが、
まずは標準を押さえていきましょう。

■MMの業務フロー

基本的なSD業務の流れは引合→見積→受注→出荷→請求の流れです。
MM業務では見積プロセスが主伝票フローの補助的な立ち位置ですが、
SD業務では正式な主伝票フローの一部(受注の前段階)となります。
またMM業務と同じく承認機能(SAPビジネスワークフローをカスタマイズする必要あり)があり、
S/4 HANAからはMM同様フレキシブルワークフローが使用できるようになっています。

■それぞれのプロセスについて

①引合

引合とは?

得意先から自社への引合を指し、
製品やサービスについて価格/納期/条件などの情報を求める
事前問い合わせへの対応を行うプロセスです。
引合の段階ではドキュメントに法的拘束力はなく購入義務もありません。
(単純に問い合わせただけとなります)
引合は顧客からの情報要求を記録するプリセールス文書であり、
SAP SDのドキュメントフローの起点になります。
社外文書としてしている企業もあります。

目的

見積や受注に必要な情報(品目、数量、希望納期)を事前に把握することが目的です。

引合の作成元や後続

引合は手動で作成できます。
後続としては見積があり、こちらは引合から参照作成できます。
引合で入力した得意先情報・品目・数量・希望納期は、
見積にコピー(コピー制御設定:VTAA)して引き継ぐことができます。
上記コピー制御を事前に正しく設定しておくと、入力作業の大幅削減になります。

Tips

顧客の要求を記録し、営業活動の効率化を行えます。
営業分析として引合→見積→受注の変換率を評価することで、営業戦略に活用する使い道もあります。
あくまで、得意先から自社への問い合わせ段階のため、正式な取引として法的拘束力を持つわけではありません。

関連カスタマイズや引合データの格納テーブル、マスタ

〇関連カスタマイズ
・引合設定:伝票タイプ(IN)/番号範囲/コピー制御/不完全伝票のチェック

〇引合データの主な格納テーブル
・VBAK:販売伝票ヘッダ
・VBAP:販売伝票明細
・VBEP:販売伝票納入日程行
・VBFA:販売伝票フロー
※引合/見積/受注はテーブル共有。判別には上記VBAKのVBTYP(伝票カテゴリ)を参照。

〇引合のトランザクション
VA11(登録)/VA12(変更)/VA13(照会)

〇主な関連マスタ
・組織マスタ
・品目マスタ/得意先マスタ/価格条件マスタ
・配送条件マスタ
・パートナー機能

②見積

見積とは?

顧客からの問い合わせに対して、価格・条件を提示するオファーを行うプロセスです。
したがって、こちらの文書は社外文書となります。
一定期間有効で、受注に変換(参照転記)可能です。

目的

得意先と受注締結のための価格や条件等を提示するオファーを行い、受注につなげることが目的です。
受注に必要な情報(品目、数量、希望納期)を事前に取り決めます。
引合はただの問い合わせであり法的拘束力はないですが、
見積は得意先への正式なオファー(回答期限付き)で、
法令や契約内容によって法的拘束力を持たせることもあります。

見積の作成元や後続

見積は手動や引合からの参照で作成できる他、受注からのコピーとほかの見積からコピーが行えます。
(コピー制御の事前設定必要)

Tips

営業分析として引合→見積→受注の変換率を評価することで、営業戦略に活用する使い道もあります。
他ドキュメントからのコピーで作成する場合は引合と同じくコピー制御を事前に正しく設定しておくことで入力作業の大幅削減が期待できます。
SAP標準では未完了状態での保存が可能で、それを参照した受注も作成可能です。
もし、不完全見積の受注変換を避けたい場合はコピー制御でコントロールするのではなく
そもそも、不完全見積の保存をさせない設計(不完全決定表のカスタマイズで抑制や拡張などでチェック)がより安全です。

関連カスタマイズや見積データの格納テーブル、マスタ

〇関連カスタマイズ
・見積設定:伝票タイプ(QT)/番号範囲/コピー制御/不完全伝票のチェック
・出力制御
・承認ワークフローの設定

〇見積データの主な格納テーブル
・VBAK:販売伝票ヘッダ
・VBAP:販売伝票明細
・VBEP:販売伝票納入日程行
・VBFA:販売伝票フロー
※引合/見積/受注はテーブル共有。判別には上記VBAKのVBTYP(伝票カテゴリ)を参照。

〇見積のトランザクション
VA21(登録)/VA22(変更)/VA23(照会)

〇主な関連マスタ
・組織マスタ
・品目マスタ/得意先マスタ/価格条件マスタ
・配送条件マスタ
・パートナー機能

③受注

受注とは?

得意先からの正式な注文を記録するプロセスです。
数量・納期・価格・支払い条件を確定し、後続処理の基準となります。
MMと連携して在庫確認(ATP)を行ったり、FIと連携して信用管理を照会等をします。
社外文書で、注文確認書として得意先へ送付されます。(受注伝票自体は送付しません)

目的

得意先からの正式な注文を記録し、この伝票を基準にその後の出荷や請求を行うことが目的です。
引合から受注までの流れで変換率を取得/評価することで、営業戦略策定のためのデータとして使用できます。

受注の作成元や後続

受注は手動で作成できる他、契約や見積から参照作成できます。
また、ほか受注からコピーを行うことも可能です。

Tips

必要な項目が未入力/値の組み合わせなどの不整合が原因で転記できない場合は
不完全伝票として保存できます。(不完全ルールのカスタマイズ次第)
また、不完全ルールの中で後続転記可能かどうかを設定することができるため、
不完全伝票だった場合は後続転記できないようにするといったこともできます。
在庫販売の場合は自動でMMと連携し、利用可能在庫から在庫が割り当たります。
自動で引き当らない場合は在庫を見直す必要があります。

関連カスタマイズや受注データの格納テーブル、マスタ

〇関連カスタマイズ
・受注設定:伝票タイプ(SO)/番号範囲/コピー制御/不完全伝票のチェック
・出力制御
・承認ワークフローの設定

〇受注データの主な格納テーブル
・VBAK:販売伝票ヘッダ
・VBAP:販売伝票明細
・VBEP:販売伝票納入日程行
・VBFA:販売伝票フロー
※引合/見積/受注はテーブル共有。判別には上記VBAKのVBTYP(伝票カテゴリ)を参照。

〇受注のトランザクション
VA01(登録)/VA02(変更)/VA03(照会)

〇主な関連マスタ
・組織マスタ
・品目マスタ/得意先マスタ/価格条件マスタ
・配送条件マスタ
・パートナー機能

④出荷

ピッキングや梱包/輸送手段の選定をはじめとする、
出庫を行うための前提条件を決定するプロセスで、
この出荷が完了して初めて出庫できます。
なお、出庫する場合は出荷伝票内の出庫確認ボタンから出庫伝票を転記できます。

目的

受注物を出庫するために倉庫管理・輸送管理を行うのが目的です。
MM業務では仕入先から送付された物品を受け取るだけのため、シンプルに発注→入庫といったフローになっていましたが、
得意先に正しく送付しなければならないSD業務では、物品を送付するための準備が数多くあるため、出庫伝票だけでは管理しきれません。
そのため、SDフローでは受注→出庫とはならず、受注→出荷→出庫の順番となります。

出荷の作成元や後続

出荷伝票はそのまま手動で作成することはできず、
受注や出荷要求、在庫転送を参照元として作成します。
受注と出庫の間には必ず出荷伝票が必要となります。
(出庫確認ボタンは出荷伝票にあるため、どの道出荷伝票は作成することになります。)

Tips

出荷伝票を転記できただけは出庫できたことにはなりません。
また、何らかのサービス受注など「物品が動かない」受注を受けた場合は
こちらの出荷伝票を経由せず、受注→請求となります。
(何れもカスタマイズで制御します。)

関連カスタマイズや出荷データの格納テーブル、マスタ

〇関連カスタマイズ
・出荷設定:伝票タイプ(LF)/番号範囲/項目カテゴリ
・ピッキング/梱包設定(倉庫管理連携)
・出庫確認時の会計転記設定(FI連携)

〇出荷データの主な格納テーブル
・LIKP:出荷伝票ヘッダ
・LIPS:出荷伝票明細
・VBFA:販売伝票フロー

〇出荷のトランザクション
VL01N(登録)/VL02N(変更)/VL03N(照会)

〇主な関連マスタ
・組織マスタ
・品目マスタ/得意先マスタ
・配送条件マスタ
・出荷ポイントマスタ

⑤請求

請求とは?

請求とは出荷または受注に基づき、得意先に対して請求書を発行するプロセスです。
請求書はFIに連携され、債権計上されます。(会計伝票が転記される)

目的

受注や出荷に基づいた請求を得意先に通知することが目的です。

請求の作成元や後続

請求伝票をそのまま手動で作成することはできず、受注or出荷からの参照で作成できます。
(VF04画面で複数の受注や出荷から一括変換することが可能)

Tips

SDとFIの連携の要になります。
受注や出荷などから参照で作成することになるため、あまり入力が必要になる項目は多くありませんが、会計転記のカスタマイズを誤ると後続のFIで金額が合わないなどの重大な不具合を起こす可能性があるため、慎重に設定してください。

関連カスタマイズや請求データの格納テーブル、マスタ

〇関連カスタマイズ
・請求設定:伝票タイプ(LF)/番号範囲等
・出力制御
・請求伝票の会計転記設定
・請求計画や部分請求などの設定
・請求スキーマの管理

〇請求データの主な格納テーブル
・VBRK:請求伝票ヘッダ
・VBRP:請求伝票明細
・VBFA:販売伝票フロー

〇請求のトランザクション
VF01(登録)/VF02(変更)/VF03(照会)/VF04(一括登録)

〇主な関連マスタ
・組織マスタ
・品目マスタ/得意先マスタ/価格条件マスタ

タイトルとURLをコピーしました