当記事ではMM(購買管理)モジュールの業務フローについて、簡単に解説していきます。
MMモジュールの購買管理では企業の購買行為について管理できます。
FIT&GAP分析の結果、導入PJによっては登場しないフローもありますが、
まずは標準を押さえていきましょう。
■MMの業務フロー

①見積(RFQ)
②購買依頼(PR)
③購買発注(PO)
④入庫(GR)
⑤請求書照合(IV)
基本的なMM(購買管理)業務の流れは購買依頼(PR)→購買発注(PO)→入庫(GR)→請求書照合(IV)の順番で処理していきます。
①の見積(RFQ)については上記フローには直接挟むプロセスではありませんが、
購買依頼から見積を起案するケースや、見積から購買契約・購買情報への反映を行う本筋の流れとは別の流れで機能しています。(見積から直接発注を打つケースも稀にあります。)
FIT&GAP分析から結局購買依頼はSAPでやらなかったり、見積や契約もやらなかったりしますので、
必ず上記の図になるわけではありません。その点ご注意ください。
■それぞれのプロセスについて
①見積(RFQ)
見積とは?
見積のプロセスはどの品目をどの価格で買うかを検討するプロセスです。
個人でも欲しいものがあって、通販さいとに同じ商品が複数出品者から出品されていたら、
価格や配送料などが一番納得できる条件を出している出品者を選ぶと思います。
企業も同じく、購買する先が数多くある中で条件の良い仕入を行うため、選定を行っていきます。
そのプロセスことが見積になります。
見積プロセスの目的
様々な仕入先や条件がある中で、見積プロセスを通して条件の良い見積を選定し
仕入れにつなげていくことが目的です。
見積の作成元や後続
見積は手動作成や購買依頼から作成することができます。
(アドオン機能で一括UL機能を作成することもある)
条件の良い見積を選び、契約に反映します。
※見積を購買情報に反映させ、発注時に自動割り当てされるように業務を組むことも多く
見積から発注に直接反映することも稀にあります。
Tips
SAP見積プロセスを使わず、非SAPで見積や購買契約を管理してSAPの購買情報マスタに直接反映することで、発注時に価格などを自動反映させるやり方がよくあります。
したがって、PJのSAP MM業務フロー図に見積や契約が登場しないことも多い印象です。
関連カスタマイズや見積データの格納テーブル、マスタ等
〇関連カスタマイズ
・見積の出力管理やメッセージ制御
・見積から発注の後続生成設定
〇見積データの主な格納テーブル
・EKKO:購買伝票ヘッダ
・EKPO:購買伝票明細
・EKET:納入日程行
・EKBE:購買伝票履歴
※発注伝票と共用のため、テーブルデータを閲覧する場合などは
EKKO-BSART(伝票タイプ)で発注か見積かを判断してください。
〇実行トランザクション
・ME41(登録)/ME42(変更)/ME43(紹介)/見積回答登録(ME47)/見積比較(ME49)
〇主な関連マスタ
・組織マスタ
・品目マスタ/仕入先マスタ/購買情報マスタ(条件レコード含む)
・供給元一覧・供給量割当
・価格条件マスタ
実務上は品目・仕入先・購買情報・条件レコードが見積価格の自動決定に直接関連してきます。
供給元一覧や供給量割り当ては調達先の選定や比較に関連します。
条件選定のルールにより参照される文頭Aのテーブル(A017など)は環境ごとに異なるため、
PB00など購買条件タイプにおける紐づきを確認してください。
②購買依頼(PR)
購買依頼とは?
購買依頼のプロセスは現場部門から購買部門へ購買を依頼するプロセスです。
したがって、購買依頼伝票は基本的に内部文書の扱いとなります。
主に品目や数量、納期、勘定設定などを含み、購買部門へ所定期日までに必要な品目やサービスの調達を購買部門へ依頼できます。
目的
会社に必要となる物品やサービスは様々あります。
例えばオフィスで使用する物品や特有の支給品等。
これらは現場の判断やその部署が直接購入するものではなく、会社の購買部門を通じて購入することになります。
その際に、購買部門へ購買を依頼するのが目的になります。
購買依頼の作成元や後続
購買依頼は手動で作成できるほか、MRPからの自動生成もあります。
後続の伝票としては購買発注で、こちらは購買依頼から参照作成できます。
Tips
製造業であれば製品における部品や原材料等の購入などの依頼時にも使用されます。
手動入力もできますが、製造品の製造には多くの部品や原材料、異なる納期情報、生産計画との突合が必要となるため、そのすべてを考慮しながら手動入力することは現実的ではありません。
そのため、SAPは生産管理領域のMRP機能を使用して必要となった物品などを基に購買依頼の自動生成を行うことができます。
生産拠点が多く、拠点ごとに違う生産システムを導入している企業がSAPを途中で導入するとなった場合は生産管理領域の導入をしない場合もあり、その場合は非SAPの生産管理システムからSAPに必要物品情報などを連携して購買依頼や購買発注につなげることもあります。
SAPの当フローには承認機能があり、社員が上長の判断を得ず独自の判断で購買依頼するような事象を防ぐことができます。
FIT&GAP分析の結果、SAPの購買依頼は使用しないこともあります。
関連カスタマイズや見積データの格納テーブル、マスタ等
〇関連カスタマイズ
・承認手続管理設定
・フレキシブルワークフロー設定
・MRPグループでの購買依頼生成設定
・購買依頼の伝票タイプや番号範囲設定、承認プロファイルの設定
〇購買依頼データの主な格納テーブル
・EBAN:購買依頼
〇実行トランザクション
・ME51N(登録)/ME52N(変更)/ME53N(照会)
〇主な関連マスタ
・組織マスタ
・品目マスタ/仕入先マスタ/購買情報マスタ(条件レコード含む)等
・供給元一覧/供給量割当
・価格条件マスタ
③購買発注(PO)
購買発注とは?
購買発注は購買部門から仕入先に実際に発注を掛けるプロセス。
したがってこちらの伝票は基本的に社外文書の扱いとなります。
※伝票自体というよりは発注伝票を基に出力した発注書が社外文書
仕入先に送付された発注書は価格/数量/納期等を含んでおり、正式に注文する法的拘束力のある文書となります。
目的
購買依頼で購買部門に依頼のあった物品を実際に仕入先に対して発注し、物品を購入する。
そのために仕入先に発注情報を伝送することが目的です。
導入次第では購買依頼に相当するプロセスを非SAPで管理し、SAPとしては発注スタートの場合もあります。
購買発注の作成元や後続
購買発注は手動で作成できる他、購買依頼からの参照作成もでき、
製造業などで、MRPから大量に作成された購買依頼を一括発注変換(ME57)することも可能です
また見積/契約/購買情報からの参照作成機能もあり、ほかの購買伝票からの参照もでき、
購買情報を事前に作成しておけば、設定しておいた価格などを自動的に発注に反映させることができます。
後続の伝票としては入出庫伝票で、購買発注から参照作成します。
Tips
購買依頼なしでも発注をすることもあるため、その場合は購買発注伝票から作成します。
購買依頼や購買契約、見積依頼やほかの購買発注から作成することもできますが、見積依頼から直接発注を作成することは少ないです。(大抵の場合は購買情報を使うか、見積→契約→発注伝票の順で適用します。)
こちらの伝票は社外文書として扱われ、発注伝票の内容を出力設定で設定した方法で出力することができます。
※購買発注とは? でも述べましたが、仕入先に送付するのは発注伝票そのものではなく
上記で出力した発注書であり、法的拘束力を持つ社外文書になります。
発注書のフォーマットについてSAP標準ではSmartFormsやAdobe Formsが提供されていますが、
実務では企業各々のカスタマイズやアドオン、周辺システムで出力することが一般的です。
購買依頼同じくSAPの当フローには承認機能があり、上長の承認を経ないまま発注してしまう事態を防げます。
発注したものを入庫した場合、ME23NやME22N画面から購買発注履歴タブを開くと入庫情報が閲覧可能です。
関連カスタマイズや見積データの格納テーブル、マスタ等
〇関連カスタマイズ
・購買発注出力管理
・購買発注承認手続設定
・購買発注伝票タイプ/価格決定(条件テーブル/決定ルール)
〇購買発注データの主な格納テーブル
・EKKO:購買伝票ヘッダ
・EKPO:購買伝票明細
・EKET:納入日程行
・EKBE:購買伝票履歴
〇実行トランザクション
・ME21N(登録)/ME22N(変更)/ME23N(照会)
〇主な関連マスタ
・組織マスタ
・品目マスタ/仕入先マスタ/購買情報マスタ(条件レコード含む)等
・供給元一覧/供給元割当
・価格条件マスタ
④入庫(GR)
入庫とは?
仕入先から発注した物品が会社に届いた際に入庫処理を行うプロセスです。
こちらは基本的に社外に出ない社内文書となります。
※入庫伝票を転記した際には入庫伝票以外にも裏で対応する会計伝票が転記されます。
目的
実際にどれだけの量の物品がどこに届いたが記載されており、入庫した物品の管理を行うことが目的です。
入庫の作成元や後続
MM業務フローにおける入庫は発注伝票を参照して入庫を作成できます。
入出庫伝票は様々な伝票があるため、ここでは購買発注参照入庫を指します。
後続として請求書照合があります。こちらは発注からの参照照合や品目単位での照合が行えます。
Tips
入庫の取消や入庫した物品の返品などもこちらのプロセスで行えます。
上記は同一画面から行えるため移動タイプや+-に注意してください。
発注したものが実際に在庫となるには入庫プロセスを行った後になります。
品目マスタに検査タイプが設定されていると、入庫時に品質検査ロットが必須となります。
検査ロットが未処理だと、在庫が品質検査在庫に留まってしまい、その後の消費や出庫などができなくなります。
※検査ロットはQMの領域になるため、ここでは解説を省きます。
関連カスタマイズや見積データの格納テーブル、マスタ等
〇関連カスタマイズ
・移動タイプ設定/勘定設定、品質検査ロット連携
・入庫伝票出力設定/入出庫伝票メッセージ管理
・許容差/過不足ルール、保管場所/在庫タイプ設定
〇入出庫データの主な格納テーブル
MATDOC(MKPF,MSEGも使用可)
〇実行トランザクション
MIGO(登録/取消/照会 可、発注参照入庫のみでなく様々な入出庫伝票の転記が可能)
〇主な関連マスタ
・組織マスタ
・品目マスタ/仕入先マスタ等
⑤請求書照合(IV)
請求書照合とは?
仕入先から発注した物品が会社に届いた後、仕入先からの請求書と、届いた物品の数量等があっているか内容を照合するプロセスです。
※請求書照合を転記した際には照合データとは別に裏で対応する会計伝票が転記されます。
この伝票は入出庫伝票転記時に転記された会計伝票と対になります。
目的
請求書と届いた物品の照合を行い、税額を含む金額や支払方法などを確定させます。
仕入先から送付された請求書の正当性を確認し、支払可能な状態に整える目的を持ちます。
Tips
請求書照合は3点照合を行うことによりその正確性を保ちます。
3点照合とは購買発注/入出庫/請求書の一致を確認し、正しい債務計上と支払いを保証する仕組みであり、会計連携ではGR/IR勘定のクリアリングに直結します。
特に請求書照合の結果をもって会計転記が行われるため、MMとFI統合の要となるプロセスです。
※3点照合って?

3点照合=請求書を支払う前に下記の3つの情報を突合する仕組み。
1.購買発注
発注した数量/価格/条件
2.入庫
実際に受領した数量
3.請求書
請求された金額や税額、数量等
3点照合の目的は?
請求書が、発注内容と受領実績が一致しているかどうかを確認することで、
不正請求や過払いを防止します。
差異がある場合はブロックされます(MRBRで解除可能です。)
関連カスタマイズや見積データの格納テーブル、マスタ等
〇関連カスタマイズ
・請求書照合設定(許容差キー、金額チェック有効化、確率ブロックなど)
・入出庫伝票基準の請求書照合設定(EKPOのWEBRE設定)
・ブロック解除(MRBR)運用、BAdIでのブロック理由の無効化解除等
〇入出庫データの主な格納テーブル
RBKP:請求書照合ヘッダ
RSEG:請求書照合明細
RBCO:請求書照合勘定設定
RBMA:品目基準の請求書照合
〇実行トランザクション
MIRO(登録)/MIR4(照会)/MIR7(仮保存(hold))
〇主な関連マスタ
・組織マスタ
・品目マスタ/仕入先マスタ/支払条件マスタ/税コードマスタ等


